アトピー奮闘記
第7回 マッサージ療法の驚異
さて、そんな生活を繰り返す中、我が家に大きな転帰が訪れました。アメリカ留学の話が持ち上がってきたのです。話が具体的になってきた時は、三男の皮膚の状態が思わしくなく、いったい勝手のわからない外国でどうなるのだろうという不安がありましたが、一方で、食べ物も環境も全く違う異国に行くと、ひょっとしたらアトピーもスーと治るのではないかと夢のようなことも考えていたと思います。あれこれと準備に追われる中、時は矢のように過ぎ去り、あっという間に出発の日が近づいてきました。出発直前は皮膚の状態は最悪で、アメリカに大きなダンボール箱5~6箱分、三男の数か月分の食料のヒエやアワを中心とする雑穀や特性のお菓子を詰め、何万円もかけて郵送したのでした。さし迫った大問題は、痒みのために彼がとても十数時間も飛行機の中でおとなしくしているとは思えないことでした。そこで、わらにもすがるような気持ちで、ヒエやアワを送ってくださっていた、岡山にある製粉所のご主人のところに連れて行き、リンパの流れを良くするというマッサージをしてもらいました。今まで数ヶ月間も格闘してきたこの重症のアトピー性皮膚炎が、たかがマッサージごときでどうなるものかと半ば馬鹿にしておりましたが、なんとその日の夜、三男は初めてぐっすり眠ったのでした。三男を布団に寝かしつけて数時間後、家内の「皮膚、なんか様子が違うよ。」という声がいまだに耳にこびりついています。その翌日に、信じられないことに、それがはっきりと実証されたのでした。皮膚炎の明らかな改善が認められたのです。それは、「どうかなー」というレベルではなく、明らかな著明改善でした。信じられない、たった一回のマッサージであれだけしつこい皮膚炎が改善するなんて。出発ぎりぎりでしたが、ご主人に相談すると、岡山から明石の自宅まで車をとばして来てくださり、何とか二回目のマッサージを受けることができました。本当に有難かったです。2回目のマッサージのあと皮膚炎はさらに改善を認めました。残念ながら、効果は永久的なものではなく、マッサージを止めるとまた皮膚は少しずつ悪化してきました。しかし、一方で、「アトピーはリンパの流れが悪いことによる」という彼の理論は、大学で西洋医学を学んできた私にとって、最初はまったくばかげているように見えましたが、目の前でその証拠をこれほどまではっきりと見せつけられると、畏敬の念を持ってそれを受け入れざるを得ませんでした。アメリカ出発まであと数ヶ月あれば、間違いなくこのマッサージを繰り返して受けさせていたと思われ、事態はまた違う方向に展開したでしょう。アトピー性皮膚炎のいわゆる民間療法には確かに、人の弱みに付け込んだ金儲け主義の、とんでもないものもありますが、この福田さんのマッサージ療法のように、不思議な効果を示すものがあることも事実です。そういうある意味では現代西洋医学より優れた医療が、いかがわしい民間療法の名のもとに、葬り去られることは、まことに口惜しいことであると思います。西洋医学だけではなく、そういう本物の医療をアトピーで悩む皆様に紹介していくことも、わたしたち医者の使命であると考えます。