その他
肥満
一般に2歳以下の乳幼児に認められる肥満は、大きくなって体の動きが活発になるとなくなる良性肥満であることが多いのですが、3歳を超えた肥満は学童の肥満、さらには成人してからの肥満につながっていくことが多いのです。脂肪細胞(脂肪をためこんだ細胞)の数は乳幼児期に決まってしまうからです。低身長や知能、性発達の遅れなどを伴う肥満はホルモンの異常など、明らかな病気によることがあります。
どうして肥満はいけない?
日本人の3大死因はガン、心臓病、脳卒中ですが、ガン以外の2つは動脈硬化が主要な原因となっており、高血圧、高脂血症、糖尿病などと深い関わりがあります。そしてそれらを引き起こす基盤に、こどものころからの肥満があるのです。成人病と呼ばれていたこれらの病気は生活習慣病という名に改められ、今まで全く健康であった成人にある日突如として起るものではなく、こどもの頃からの長い食生活や生活態度などの習慣が積み重なって、知らない間に徐々に形成されるものであるということがはっきりと認識されるようになってきました。それらは発症してしまうと治癒させることは不可能ですから、こどもの時から対策を立てて予防することが大切です。さらに最近は、動脈硬化は既に10才台から始まっていることがわかってきており、実際、コレステロールや血圧の高い小学生、中学生が増えてきています。肥満の予防と改善はこの生活習慣病対策に他ならず、健康で長生きするカギなのです。
肥満の原因は?
肥満の子どもが多くなってきた原因は食生活、学校生活などの子どもを取り巻く生活環境が大きく変わってきたことによると思われます。食事の中の炭水化物の量が減って、代わりに脂肪の量が増え、しかも、魚からとる脂肪より牛豚鶏などの動物よりとる脂肪の増加が目立ちます。すなわち、食事が以前の米、野菜、魚を中心にした和食から、肉や脂を多く取る欧米型に変わってきているのです。さらに、その便利さから、揚げ物やハンバーガーなどのファーストフードを与えられる子どもが多くなりました。また、学校が終わると塾に行き、遊びといえば家の中でテレビゲームやコンピューターをして、運動をする機会がどんどん減ってきています。
肥満の程度をみてみましょう
肥満度の表し方はいろいろあるのですが、各身長から求められる標準体重から何%離れているか(体重―標準体重)÷標準体重×100(%)を計算し、肥満度20~30%を軽度、30~50%を中等度、50%以上を高度肥満とするのが一番わかりやすいでしょう。肥満度判定曲線を用いますと一目瞭然でわかります。肥満度が30%以内でそれが増加しないものは良性肥満であり、逆に肥満度が30%以上や肥満の程度が年々増加しているような場合、身長の伸びが悪くなっているような場合は要注意です。
肥満時の時の検査
血圧を測り、検尿で糖尿が出ていないかどうか調べます。血液検査で、中性脂肪やコレステロール(悪玉LDLと善玉HDL)、肝機能、血糖、痛風の原因となる尿酸を調べます。超音波検査で脂肪肝(肝臓に脂肪がたまっていると超音波で真っ白に写ります。)の有無や心臓の動きを調べたりします。心臓に負担があると思われる場合は、心電図をとります。これらの検査上異常がある場合や睡眠時に無呼吸発作がある場合は病的な肥満と考えて、より厳重に管理、減量せねばなりません。
肥満の治療
肥満はもちろん遺伝や体質によるところもありますが、その食生活や運動不足によるところが大きいのです。肥満は生活態度を改めることが治療の主体となるので、まず、本人が強い意志を持ち、家族がそれに協力していただかなければなりません。そういう意味で薬が治療の主体となる他の多くの病気と比べ、ずっと治療が難しいといえます。発育期にある子どもの場合は原則として減量はせずに、体重増加を抑えて身長の発育を待ち、相対的に肥満度を減少させていきます。体重のグラフを継続して記入させると励みになります。
【食事の見直し】
むやみに食べる量を減らすよりも、1日3食、均等に3等分して規則正しく、よく噛んで時間をかけて食べてください。ご飯を食べることにより、血糖が上がってくると満腹感が出てきて食欲がなくなってきますが、ご飯を食べている時と血糖が上がってくる時に時間差があるため、急いで食事をすると、この満腹感を待たずに食べ続けることになってしまいます。ですから、ゆっくり時間をかけてよく噛んで食べることは大切なのです。果汁、ジュース、清涼飲料水はやめて、水、お茶、紅茶にし、おやつは1日1回、低カロリーで栄養価の高いものにして、テレビを見ながらだらだら食べることはやめましょう。肉が好きなら食べてもよろしいが、野菜をたくさん食べてからにしてください。現在、1日何カロリー食べているのか栄養士さんに計算してもらいましょう。学童期肥満の食事の目安は、総カロリー1600~1700kcal、蛋白質70~80g(総カロリーに占めるカロリーの比率:20%)、脂質50~60g(同:30%)、糖質200~220g(同:50%)です。
【運動の見直し】
最近のこどもは外で遊ぶ代わりにテレビゲームやコンピュータ、クラブ活動の代わりに塾通いと、日常生活の中に運動を自然な形で取り入れることがなかなか難しくなってきています。そこで、どうしても運動の機会を意識的に作っていかなければいけませんが、肥満のこどもは概して運動が苦手ですので、水泳など人との比較があまり目立たないスポーツを選ぶのがよいかもしれません。
【生活の見直し】
食事の後片付け、布団敷きなど自分のことは自分でする、エレベーター、エスカレーターは使わずに階段を利用するなど、常に身体を動かす習慣をつけさせましょう。
【漢方薬】
効果のある漢方薬があります。年長児では、試してみてもよいでしょう。ただし、上の3つの「見直し」も並行して行う必要があります。