感染症編

アデノウイルス感染症

 アデノウイルスとは

‘アデノ’とは扁桃腺やリンパ節を意味します。アデノウイルスはその名のとおり、扁桃腺やリンパ節の中に潜んで増えます。人に感染するものは現在50数種類知られており、それぞれ番号がついていて、どの種類がどんな病気を起こすのか、ある程度わかっています。アデノウイルス感染症は比較的夏場に多く、そういう意味では「夏カゼ」の一つです。その症状は、ウイルスの種類や感染した人の状態によって、症状の出ない不顕性感染や軽いカゼ程度から、重症の扁桃腺炎や肺炎、さらには結膜炎や嘔吐下痢症などバラエティに富んでいます。診療中によくみる典型的なものは、高い熱が出て扁桃腺が腫れ、片目または両目が充血して真っ赤になるもので、咽頭結膜熱(プール熱)と呼ばれます。

 

アデノウイルスの起こす病気

アデノウイルスは、以下のようないろんな病気を起こします。潜伏期は概ね5~7日です。ウイルスの種類が複数あり、免疫がつきにくいため、何回もかかることもあります。

 

①上気道炎、気管支炎

熱、鼻水、咳、のどの痛みなどを主な症状とするいわゆる‘カゼ’の原因になります。時に高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛などのインフルエンザ様症状を起こすこともあります。

②肺炎

特に、アデノウイルス7型は重症の肺炎を起こすことで知られています。5歳以下の乳幼児がかかることが多く、髄膜炎、脳炎、心筋炎などを併発することもあります。

③扁桃腺炎

扁桃腺に膿がつき、高熱が3~7日間続くことが多く、血液検査では白血球が増えて血沈・CRPなどの炎症反応が強く、細菌感染と区別がつかない場合があります。

④咽頭結膜熱(プール熱)

主としてアデノウイルス3型が起こします。高熱が3~7日持続し、扁桃腺が腫れ、のどの痛みを訴えます。両目または片目が真っ赤に充血し、目やにが出ます。夏にプールを介して流行することがあるため、プール熱とも呼ばれていますが、プールに入らなくても飛沫や糞便を通して感染します。うがい、手洗い、プールの塩素消毒などで、ある程度予防できます。

⑤流行性角結膜炎

主としてアデノウイルス8型が起こします。目が充血し、目やにが出ますが、咽頭結膜熱のように高い熱はなく、のどの赤みも強くはありません。学校伝染病の一つで、伝染の恐れがなくなるまで登校禁止となります。

⑥胃腸炎(嘔吐下痢症)

ロタウイルスと同じく、乳幼児の嘔吐下痢症の主な原因となります。特にアデノウイルスによる腸炎は、腸重積を起こす原因になると言われています。

⑦出血性膀胱炎

主としてアデノウイルス11型が起こします。排尿時痛があり、真っ赤な血尿が出ます。

⑧無菌性髄膜炎

他のウイルスによる髄膜炎同様、発熱、嘔吐、頭痛が主な症状です。

 

アデノウイルス感染症の診断

保育所や幼稚園で集団発生することがあるので、まずその情報が大切です。ずいぶん昔、私が医師になりたての頃は、アデノウイルス感染を診断するためには、ウイルス培養という特殊な検査や、2回以上血液検査をして抗体が増えているかどうか調べなければなりませんでした。ウイルス培養は結果が出るまで1ヶ月以上かかり、血液検査は数週間の期間を置いて2回以上行って判定しなければならないため、実際の診療にはほとんど役に立たないものでした。アデノウイルスによる扁桃腺炎や結膜炎などはその症状が非常に強くて、細菌感染によるものと見分けがつかず、抗生剤も効かないため、入院させて治療していてもなかなか症状が治まらず、治療している医師も家族も随分と不安な気持ちになったものです。幸い多くの場合、時間さえ経てば自然に治るので、自然に治ったのか薬が効いたのか、実のところよくわからなかったというのが実情でした。しかし今は、綿棒で拭い取ったのどの浸出液や目やに、あるいは便を調べることによって、その場で簡単にこのアデノウイルスの感染を診断することができるようになりました。まさに隔世の感があります。

 

アデノウイルス感染症の治療

残念ながら、診断できてもウイルスそのものに対する特効薬はなく、熱や脱水症状に対する対症療法しかありません。細菌の混合感染が疑われるような場合は、抗生剤の使用も考えます、しかし、一部の重症例を除いて、時間さえたてば自然に治るだろうと予想することができます。ぐったりして重症感の強い場合は、ステロイドの使用を考えます。ただし、使うタイミングと量が難しいので、その使用は慎重に考えます。さらに難治例にはガンマグロブリン(ヒト免疫グロブリン)が効果があると思われますが、血液製剤で合併症もないとは言い切れないので、当院での使用経験はありません。

 

自宅での注意点

通常は、自宅で安静にしていると数日の経過で自然に回復してきますので、いったん診断がつくと、あまり心配されることはありません。ただ、肺炎や髄膜炎、脳炎などの重症となることがあるため、咳や嘔吐がひどかったり、けいれんを起こしたり、ぐったりしてくるようであれば、早急に受診してください。熱が高い間は、こまめに水分補給をして、脱水症にならないように注意してください。尿の出が少ないようであれば、やはり受診されたほうがよろしいでしょう。

 

予防法

咳、くしゃみや便、あるいは人との直接接触によって感染します。手洗いを十分に行い、感染者の使ったおもちゃ、タオルや衣類をそのまま使用せず、煮沸消毒したり次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイターなど)で、約2時間漬け置き消毒します。

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角丸

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