アレルギー編

アトピー性皮膚炎

 まず はじめに

まず最初に強調しておきたいことは、「アトピー体質は生まれたときに決まっており、それは生涯変わらない」ということです。これはアトピー性皮膚炎(以下アトピーと略します)は一生治らないということではありません。体質は変わらなくても、症状が出ないようにコントロールすることは可能なのです。そのためには、「病院での投薬治療より、日常生活そのものの方が重要である」ということも強調しておきます。主治医はお子さんの保護者やご自身であり、医者はアドバイザーです。そして治療や対処法は一つではなく、いく通りも考えられます。

 

アトピー症状は警告する

最近、アトピーだけではなく気管支喘息や花粉症などのアレルギー疾患が急速に増加、低年齢化、重症化しています。この大きな原因の一つは、私たちの回りをとりまく環境の激変です。空気、水、土、食物、住居、心のストレスなど、身の回りのすべての物を見てみましょう。それらは、ここ数十年でどれだけ変わりましたか? 人間の体は本来ゆるやかな変化には適応できますが、あまりにも急激な変化には適応できず、本能的にそこから逃げ出そうとします。回りの環境が急激に変化したとき、自分の体の中から何らかのシグナルを出して、「ここは何かおかしいぞ。すぐここから逃げ出せ。」と自分自身に警告するのです。それでもそこに留まっていたら、次に体の変調をきたします。そのシグナルと変調の二つがアレルギー症状なのです。アレルギー(アトピー)体質とは、環境の変化に敏感な体質と言い換えることができるかも知れません。幸いなことに、多くの人のアトピーは小学校に入るころまでには改善するのですが、一旦治ったかに見えても成人した後に再発したり、気管支喘息や花粉症として発症することもあります。アレルギー体質は変わらないからです。アトピーの根本対策は、地球をもとのきれいな状態に戻すことなのですが、残念ながらそれは出来そうもありません。環境汚染や心のストレスのない場所に移住することでさえも、現実的には不可能です。私たちはもはやここからは逃げ出すことはできず、その中で何とかしのいでいかなければなりません。アトピーの状態は本人だけではなく、家族全員の健康の敏感なバロメーターと考え、悪化すれば家族の生活全体を反省してみましょう。アトピーの子どもの皮膚はとっても精巧な環境センサーなのです。

 

特異的IgEの検査

原因となるものを食べたり触ったりして、すぐに皮膚に発疹やじんましんが出る場合を即時型のアレルギー反応と呼びます。この場合は血液検査でその原因物の特異的IgE(白血球が作る抗体(たんぱく質)の一種)を調べると増えていることが多いのです。アトピーの原因の一部にはこのタイプのアレルギーが関与しています。出やすいものとして、卵白、卵黄、ミルク、チーズ、豚肉、牛肉、鶏肉、カニ、エビ、サバ、アジ、イワシ、カレイ、米、小麦、そば、大豆、トウモロコシ、ピーナッツなどの食物(食べて症状が出る食物はもちろんのこと、頻回に食べるものにも要注意)、犬、猫、ハムスター、ニワトリなどの皮膚や毛(特に、室内でペットを飼っている人)、ダニ、ハウスダスト(特に、咳が長引く傾向があったり気管支喘息がある人)、カビ(特に、倉庫や地下室などの湿気た場所で症状が悪化する人)などがあります。特異的IgEが高く出たからといって、それがすぐに原因だと決めつけることはできませんが、少なくともアトピーの原因の一つを作っている可能性があります。

 

食物日記

食べてすぐ発疹やじんましんが出て皮膚が悪化する場合は、原因食物を特定しやすいのですが、遅発型や延型(かくれ型)といわれ、食べてから1~3日してから皮膚が悪化する場合は、非常に原因がわかりにくいのです。そのような場合でも、こまめに食物日記をつけていると原因食物の見当がつくことがあります。食材そのものにではなくて、残留農薬、合成保存料、着色料などの食品添加物が原因となっていることもあり、注意が必要です。食物日記によって原因の見当をつけ、それを約2週間除去して皮膚の状態が良くなり、食べて悪くなれば、まず、その食物が原因と考えてよいでしょう。

 

スキンケア

肌に触れるもの全てに気をつけてください。汗や汚れをこまめに落とすことは大切ですが、洗浄力の強い石けんをナイロンタオルなどにつけて、ごしごし体をこすることはよくありません。コラージュDなどの脱脂力が弱く低刺激性の石けんで、タオルを使わずに手で体を洗うようにしてください。最後に石けんや完全にすすいで流します。お風呂の湯はぬるめにして早く切り上げ、入浴後、皮膚が乾燥しないうちに保湿剤(ヒルドイド、ワセリンなど)を塗ってください。お風呂やシャワーの湯の中の塩素が皮膚にしみる人には、浴槽にビタミンC(アスコルビン酸)などの抗酸化剤を入れたり、浄水器の使用が有効です。肌着は綿100%のもので、合成洗剤ではなくて石けんで洗うこと、新しい肌着や服はいったん洗ってから着るほうが無難です。日焼け(紫外線)したり、塩素消毒の強いプールに入ることは皮膚の状態を悪化させます。

 

ダニ対策

じゅうたん、布ソファ、ぬいぐるみなど、ダニのすみかになるものは極力除き、部屋が常に高温多湿にならないように、出来る限り換気をしましょう。子どもは一日の半分近い時間を布団の上で過ごしますので、布団をよく日に干してダニを殺し、掃除機でそれをしっかりと吸い取りましょう。洗えるものは丸洗いしましょう。布団をパンパンたたくことは、布団の中からほこりやダニの死骸が出てくるため、あまりすすめられません。防ダニ布団、ダニ用掃除機、空気清浄器などをよく検討して購入するのもよいでしょう。ダニ対策は気管支喘息の予防にもなります。

 

食事療法

特異的IgEの検査や食物日記によってアトピーの原因となっている食物の見当がつけられた場合、それを除去することを検討します。

(厳格除去)

原因と考えられる食物を食べるとひどいじんましんが出たり、アナフィラキシーと呼ばれる呼吸困難やショック状態におちいる危険な反応を起す場合は、細心の注意を払って完全に除去します。そして発育と栄養状態をみながら、食べられる食材や調理法を探します。除去する期間は各人の症状や状況に応じて様々です。そして皮膚の状態や特異的IgEの値が改善したら、注意深く一つ一つ食べ始めてみます。開始する時は、何かあってもすぐに病院を受診できる体勢で行います。最初は食物を唇に塗りつけるか、飲み込まずに口の中に含んでみます。異常がなかった場合は耳かき一杯分食べてみます。次の日はサイコロ1つ分、その次の日は小さじ一杯分と状態を見ながら量を増やしていきます。

(ゆるい除去)

原因と考えられる食物を食べても、はっきりとした症状が出ない場合や時々症状が出るだけの場合は、注意しながら食べていきます。よく火を通して加工したもの少量であれば比較的安全です。同じものを少なくとも4日に一度しか食べないようにすると、さらに安全です。もちろん原因の食物の数が限られている場合は、しばらくの間厳格除去をして皮膚の状態を観察してもよいでしょう。Aを除去した代わりに、決してBばかり食べてはいけません。やがて、Bにも反応するようになります。大切なことは多くの種類のものを回転させて食べることなのです。

(洋食より和食を)

浄水器を通したきれいな水で調理し、できるだけ農薬や保存料を含まない旬の食材を食べてください。砂糖、脂肪、刺激物(スパイスなど)のとりすぎはアトピーを悪化させます(概して洋食はアトピーを悪化させ、和食はアトピーを改善します)。インタールという薬を食べる約30分前に内服すると、腸管の表面を覆ってアレルギーの原因となる未消化の食物の吸収を防いだり、痛んだ腸の粘膜を修復します。小建中湯などの漢方薬でお腹を丈夫にしていくのもよいでしょう。

 

ビタミンと必須ミネラルの補給

アトピーの人に限らず、現代人はビタミンB、C、Eやマグネシウム、亜鉛、セレン、カルシウムなどのミネラルが不足している傾向があります。ビタミンやミネラルは潤滑油のような働きをして体の調子を整えているため、それらが不足すると体の調子が狂って、アトピーが悪化します。ビタミンBはレバーや貝に、Cは新鮮な野菜や果物に、Eは米や小麦などの胚芽や植物性の油脂などに含まれます。海藻類にはミネラルが豊富です。また、化学肥料で造った野菜よりも有機栽培の野菜の方がビタミンやミネラルの量がはるかに多いので、できるだけ有機栽培のものを食べましょう。食事で十分補えなければ、健康食品として市販されている総合ミネラル剤や総合ビタミン剤で補う必要があります。

 

腸内のカンジダや悪玉菌の駆除

アトピーの人の腸の中には、カンジダというカビが生えていることがあります。カビの繁殖によって傷んだ腸から、未消化の食物が吸収されて血液の中に入るとアレルギー反応を起こします。甘いものや納豆など発酵させた食物をたくさん食べているとカビの繁殖を促進します。下痢や便秘をくり返し、いつもお腹の調子が悪い人はこの疑いがあり、検便でカンジダが出たり、血液検査でカンジダに対する特異的IgEが上昇している場合には、ナイスタチンなどのカビを殺す薬が有効です。また、便の培養で病原性大腸菌などの悪玉菌が腸の中にいることが確認できた場合、それを退治する抗生剤や、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などの善玉菌製剤を内服するとアトピーが改善することがあります。

 

対症療法(軟膏や内服薬)

上に述べてあるアトピーの根本療法を行っても、なお症状のコントロールができないとき、いろんな種類の漢方薬や抗アレルギー剤、軟膏を併用することも有効です。特にステロイド軟膏に関しては、いろんなまわりからの情報によって拒否反応を示される人も多いのですが、正しく使えばとても効果的です。とりわけ土佐清水軟膏はステロイドを含んでいるにもかかわらず、皮膚を薄くするステロイドの副作用が極めて出にくいのでお勧めです。

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角丸

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