症状編

発熱 ~ 熱型表(体温記録表)と熱さましの使い方 ~

熱とは何でしょうか?

「熱が出ました」というのは子どもが病院を受診する最も多い理由の一つだと思います。この熱 というのはどういうものなのか、ここで少し深く考えてみましょう。ごく一部の例外を除いて、まず、 熱が出るのは細菌やウイルスに感染した時と考えてよいでしょう。病原体が体に進入すると、体は抗体 というたんぱく質や白血球を動員してそれを攻撃します。熱が出るのは、ずばり、体温を上げることに よってその攻撃力を強めるためなのです。また、熱を出すことによって、 体に‘だるさ’を自覚させ、それが‘体を横にして休め’という指令となります。熱が出るとぐった りしているように見えますが、実は体を休めて、体力を蓄えているのです。 熱が出る時はまず、体をぶるぶる震わせて熱を発生させ、かつ、末梢の血管を収縮させて発生した熱を 逃がさないようにします。この時、寒気がして手足が冷たく、顔色も悪くなります。この時が一番つら い時ですが、これを通り過ぎ、熱が上がりきってしまうと、体がぽかぽかと暖かくなり、逆に気持ちよく眠たくなります。以上、 熱が出るというのは、人間の体に備わった、外からの病原体と戦うための合理的な反応であることを、 まず理解してください。ですから、熱が出ただけで、あわてて病院に駆けつける必要はありません。咳 がひどい、頭やお腹や耳が痛い、吐くなど他の症状がなければ、水分をしっかり補給し、体を休ませて 、しばらくそのまま様子を見てもよいでしょう。余談ですが、こどもの発熱の原因として盲点になるのは、 尿路感染症中耳炎です。はっきりとしたかぜ 症状がない場合、検尿をしますので、尿をためて来るか、尿を持ってきて ください。また、出来る限り耳鏡で鼓膜を見て、中耳炎 になっていないかどうか調べます。

どんな時に熱さましを使えばいよのでしょうか?

以上のことより、熱が出るとすぐに熱さましを使って下げるのは、よいことではないことがお分かりでしょう。一番大 きな誤解は、見かけ上、熱が下がったことによって、病気そのものが治ったように錯覚することです。無 理に下げた熱は、またすぐに上がってきます。実は、熱が上がりきってしまったら体は楽になるのです が、この熱が上がる時が一番つらいのです。また、熱性けいれんは、熱が上がりきった状態ではむしろ 起きにくく、熱の上がりかけによく起きるのです。ですから、熱さましを何度も使って、体温を下げたり上げたりすることは、つらい思いやけいれんの機会を無理に増やしていることになるのです。さらに、熱が下がると元気になったように錯覚しますから、体を休めることを忘れ、結局体力 を消耗させてしまうのです。それだけではありません。熱さましによって、無理に体温を引き下げる と、行き過ぎて36℃以下の低体温となったり、肝臓を いためたりすることがあります。また、最近、インフルエンザの時、ある種の熱さましを使った方が、明ら かに脳症になる率が高くなることがわかりました。以上の説明から、子どもが熱を出していても、おとなしくしている時や、すやすや眠っている時は、熱さましを使うことはむし ろ害になるということがわかっていただけたでしょうか。熱さましは決して病気を治す薬ではありませ ん。むしろ逆に病気を長引かせたり、病気の経過をわからなくしてしまう可能性があるのです。では、 どういう時に熱さましを使えばよいのでしょうか。それは、熱が高すぎて機嫌が悪 く、眠れなかったり、水分が取れなかったりする時です。熱に強い人と弱い人があるので、特 に何℃で使うという基準はありませんが、一般的には39℃前後でしょうか。弱めの熱さましで少しだけ 体温を下げるだけで十分です。平熱にする必要は全くありません。熱さましで下げた熱は、いずれまた上がってきます。熱が下がっている間に、食事と睡眠をとりましょう。熱が出ている時は、体が病気と戦っ ている時です。熱を下げるより、十分な睡眠と水分の補給の方が大切です。

 

熱型表(体温記録表)をつけましょう。

病院に来られた時、子どもの熱について、できるだけ詳しく具体的に 説明してくだされば、病気を診断したり、経過を観察したりする上で大変助かります。例えば、 昨日から40℃の熱があるという場合より、38℃の熱が一週間続いている場合の方が注意を要するのです。 すなわち、熱の高さより、熱が続いている期間の長さのほうが、問題となることが多いのです。熱は一般的に 午後から夕方にかけて高くなってくるものですが、その高くなり方がだんだん少なくなってくるようで あれば心配いりません。そのうち平熱になると予想することができます。熱が数日間続いているといっ ても、その中にまる1日以上、完全に平熱になった日があったなら、それもあまり心配いらないことが多いのです。一日 のうちで高熱と比較的低い熱が繰り返される時(スパイク様の熱といいます)、若年性関節リュウマチ などの膠原病や悪性腫瘍によることがあります。これら熱の様子を、口で説明することは難しいですが 、一枚の熱型表(体温記録表)を見せてくだされば、一目瞭然です。この熱型表を家に何枚か持っておき、熱が続くと、朝昼晩と1日最低3回は熱を測ってグラフにして持って来る習慣をつけてくださると、熱の経過がはっきりとよくわかり、診断をつけたり、検査を進めたり、熱のゆくえを予想したりするのに大変役立ちます。

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角丸

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